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2008年度の研究を基に作成された情報です。 |
(1)末梢循環障害の予後調査結果ーレイノー現象の推移ー
対象は1972年から1994年の間に3年間以上山陰労災病院を受診した振動障害患者136人について、医療記録(カルテ)の情報をもとにレイノ一現象の経年的変化について調べた。その中で初回受診から15年以上追跡できた99例を対象とした。
レイノ一現象の評価はスットクホルムスケールを用いて行なった。カルテに記載されたレイノ一現象の状況(蒼白発作の部位、頻度)により、受診年毎のスットクホルムスケールを記載した。表6は初診時の状態を示し、表7は15年経過後の状態を示します。
表6.初診時の状態
表7.15年後の状態
上記の表の見方は初診時にSage3であった27例は、15年後にSage0に改善した症例は8例、Sage2に改善した症例は11例、Sage3のままで不変は8例であったことを示します。全体をまとめてみると、振動障害患者のレイノー現象の症度は、スットクホルムスケールでみると経年的に改善の傾向がありました。しかし、stage3の患者では70%以上の人が15年を経過してもなおレイノー現象の発作がみられました。stage3のレイノー現象の治癒は困難と考えられます。故に、振動障害の予防および、増悪予防のための早期診断と適切な事後指導が必要です。
しかしながら、上述の改善が真の改善か否かについては、以下の問題から疑問が残ります。対象患者の高齢化から職業活動を含め社会活動のactivityの低下により寒冷期における屋外活動が減少しているとすれば、当然ながらレイノー現象の出現頻度および、その出現範囲の縮小が生じても不思議でないからです。
レイノー現象の経年的変化を冷水負荷皮膚温テストからみると両者の関係には一定の関係はなかったことから、冷水負荷皮膚温テストは予後を反映していないと考えられました。
図25冷水負荷皮膚温テストの変化
(2)末梢神経障害の予後
山陰労災病院を1972年から1980年の間に受診した振動障害患者で、3年以上受診した136人について、1994年までの医療記録(カルテ)の情報をもとに神経障害の経年的変化について調べました。神経障害の評価はスットクホルムスケールを用いて行いました。カルテに記載された自覚症状、診察、検査結果により、受診年毎のスットクホルムスケールを記載しました。初回受診から15年以上追跡できたのは、88人でした。88人のうち肘部管症候群14人を除いた74人について結果を、表8、9および図26〜28に示します。
検査法は以下のとおりです。
- 正中神経の知覚神経伝導速度:neuro pack II plus (日本光電)を用い、手関節より刺激し第3指で記録。
- 振動覚閾値検査:振動知覚計リオン製Model AU-02を用いて、第2指-第4指を測定。単位dB
- 握力 スメドレー握力計 最大握力
表8.15年後の左右別に見たStageの状態
図26 振動覚閾値の変化
図27 正中神経の知覚神経伝導速度の変化
図28 握力の変化
以上の結果をまとめると、
全体としては(1)初診時Stage0SN であった患者は全員15年後もStage0SNでした。(2)Stage1SNの患者33人のうち26人はStage1SNのままであり、5人はStage0SNと症状が改善し、2人は悪化しました。(3)Stage2SNでは、1人のみ改善しました。20人はStage2SNのままでした。(4)Stage3SNでは、全例が15年後もStage3SNでした。正中神経の知覚神経伝導速度では初診時にStage3は5年後に改善したように見えますが、これは手根管症候群を見落としたミスによるものです。振動覚閾値には経年的な変化は見られませんでした。握力は経年的に各Stage群とも低下していました。
以上のことから、末梢神経障害は経年的に明らかな変化は観察されなかったことになりました。
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