振動障害
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振動障害の診断と治療
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山陰労災病院における診断基準と振動障害認定
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山陰労災病院における診断基準と振動障害認定
2008年度の研究を基に作成された情報です。
 山陰労災病院では振動障害の診断に際しては、ストックホルムスケールを基本に用いています。診断の項で述べた詳細な問診を行い、さらに必要な検査を行なって自覚症状と検査値によってストックホルムスケールにより症度を決定します。除外診断のため、リウマチ因子、血沈の検査、頚椎のエックス線写真を行います。必要によっては、頚椎のMRI検査、血管造影(閉塞性血管障害が疑われた場合)等を行う場合もあります。
(注)ストックホルムスケール(Stockholm Workshop scale)
 それまで欧米で使用されていた、振動障害のTayler-Pelmearの分類をもとに新しい研究成果を踏まえて改変した国際的な振動障害症度分類です。1987年に発表されました。血管障害(Gemne G, et al. The Stockholm Workshop scale for the classification of cold-induced Raynaud’s phenomenon in the hand-arm vibration syndrome (revision of the Taylor Pelmear scale) Scand J Work Environ Health 13,1987, 275-278)と神経障害(Brammer A, et al. Sensorineural stages of the hand arm vibration syndrome. Scand J Work Environ Health 13,1987, 279-283)に分けて分類しています。主観的な自覚症状を基にした分類ですが、簡便であり振動障害の疫学的研究にはこの分類を用いるという国際的な約束が1994年のストックホルムでの振動障害ワークショップで合意され、広く用いられています(表4、5)。

末梢循環障害

 前述したように、振動障害に比較的特徴的とされる症状はレイノー現象であるため、やはり何よりもレイノー現象の有無の確認がキーポイントとなります。レイノー現象かどうかの確認には、カラー写真を撮ってもらうなどして客観的に確認する方法もあります。写真を撮る場合、顔を画面の中に入れて手と同時に撮影したものと、両手だけの写真があることが理想的です。写真などがない場合、蒼白化の起こり方、初発の時期、状況、部位、その後の部位の広がり頻度の変化などを詳細に聴取して、
  (1)相当の手腕振動への曝露歴があり、
  (2)実際に振動障害によるレイノー現象であることが出現態様や部位各種検査から想定され、
  (3)レイノー現象をきたす他の疾患が鑑別診断によって十分除外され、
 振動障害によるレイノー現象と見て矛盾がないかどうかを判断する必要があります。問診による自覚症状を主体に、FSBP%の値、指尖容積脈波、サーモグラフィー、爪圧迫試験の値も参考に診断しています。しかし、FSBP%値の占める意味が大きいことには問題ないと考えています。山陰労災病院では冷水負荷5℃、10分法による皮膚温度測定は、振動障害患者受診者に高齢者が多く、高血圧や心臓疾患の既往者が多いため、循環器系の負荷を考慮して現在行っていません。
 注意深い問診と検査結果によりストックホルムスケールを決定いたします。

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