石綿による肺がん、中皮腫等の健康障害が発生するおそれがあるため、従来から、労働安全衛生法や特定化学物質等障害予防規則等に基づく規制が行われてきており、平成7年のアモサイト(茶石綿)及びクロシドライト(青石綿)含有製品の製造等の禁止、さらに平成16年10月のクリソタイル(白石綿)等の石綿を含有する建材、摩擦材、接着剤の製造等の禁止等により、国内の石綿使用量が削減されてきましたが、今後、石綿が建材として使用されている建築物の解体が増加し、そのピークは2020年から2040年頃と想定されています。 また、建築物に吹き付けられた石綿が損傷、劣化することにより、建築物内の労働者が石綿にばく露するおそれも考えられています。 このため、建築物等の解体等の作業におけるばく露防止対策を強化・充実し、石綿が吹き付けられている建築物の所有者等が講ずべき一定の措置等をも定めた、新たな規則として、「石綿障害予防規則」が、平成17年2月24日制定(同年7月1日から施行)され、石綿による健康障害の予防対策の一層の推進を図ることとなりました。 石綿障害予防規則では、石綿による肺がん、中皮腫等の健康障害を早期発見するため、事業者に対して、以下の労働者について、健康診断の実施等を義務付けています。(石綿障害予防規則第40条〜第43条)
○ 健康診断の対象者
○ 健康診断の実施時期
○ 健康診断の項目
○ 健康診断結果の報告・記録
○ マスク効率
岡山産業保健推進センターにおいて、現場で石綿除去作業を行なっている労働者防じんマスクのマスク効率と作業環境について検討した。 石綿除去作業を行なっている20の作業現場で、このうちレベル1とは石綿含有吹付け材の除去作業で17箇所で、レベル2とは石綿を含有する保温材、断熱材、耐火被覆材などの除去作業で3箇所であった。これらの作業現場におけるアスベスト濃度を測定したところ、作業現場室内の空気中石綿濃度はレベル1で平均2.6×104±3.5×104f/Lで、レベル2では平均322±162f/Lであった。(図1−1・2)。 労働者はすべて男性で、年齢は平均38.1歳、レベル1で平均38.6歳、レベル2で36.2歳であり、マスク着用率はレベル1・2共に100%であった。レベル1の作業者は97名中96名が全面型、1名が半面型マスクを着用していた。またレベル2の作業者18名は全員半面型マスクであったが、そのうち6名は電動ファン付マスクであった。粉じん作業の作業従事期間は全体平均31.6ヶ月、レベル1では平均30.1ヶ月、レベル2では平均41.5ヶ月と比較的短期間であった。 石綿除去作業労働者のマスクもれ率はレベル1で平均5.6%、レベル2で平均3.4%であった。レベル1でのもれ率は0〜1%未満のもれ率が最も多く56名、50%以上のもれ率は3名であった(図2)。 レベル2でも〜1%未満のもれ率が最も多く11名、10〜20%のもれ率は2名であった(図3)。 レベル1の作業現場では、マスクのもれ率が高ければ、石綿肺の発生危険もあり、より低濃度でも発生する。中皮腫を防ぐためにも正確なマスクの着用が必要となる。