アスベストへのばく露によって生じる疾患としては、腫瘍性疾患として中皮腫と肺がん、非腫瘍性疾患としてアスベスト肺(石綿肺)、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水があり、これらが労災補償制度では認められています。このうち、病理学的所見が重要となるのは、中皮腫、アスベスト肺と肺がんです。
中皮腫
発生部位はおよそ8割が胸膜で、ついて腹膜、心膜、ごく少数に精巣鞘膜となって
います。肉眼的には、上皮型でヒアルロン酸を主体とする酸性粘液多糖類を大量に産
生する例の割面は灰白色・粘稠となっています。肉腫型では灰白色、充実性で壊死を
伴う場合もあります。線維形成型では瘢痕様の硬度を示し肉眼的に陳旧性の胸膜炎と
鑑別することが困難です。
アスベスト肺(石綿肺)
光学顕微鏡下で認められる初期変化としては呼吸細気管支周囲の線維化があります。
しかし、この変化は散在性にみられることが多いため気付くのが困難です。時間を経ると繊維化は細気管支壁から隣接した肺胞壁、肺胞道へと拡がり、隣接する細気管支をつなぐ線維化となり、最終的には気腔の不規則な拡張からなる蜂巣肺になります。こうした最終的な線維化の所見は、アスベスト小体の存在を除くと、間質性肺炎の末期にみる所見と大きく変わるところがありませんが、病変が小葉中心の細気管支周囲から始まることがアスベスト肺の特徴です。
肺がん
アスベストばく露に関連する肺がんには、発生部位や組織型に特徴がありません。
画像診断ではアスベスト肺の所見を欠く例でも、病理組織学的には末梢肺の不規則な
線維化やアスベスト小体の沈着を伴います。
【出典:「アスベスト関連疾患日常診療ガイド」】
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