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振動障害
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テーマ4.
振動障害、頸部脊髄症、頸椎性神経根症、絞扼性神経障害、糖尿病における振動覚閾値検査及び電流知覚検査

対象と方法

6施設における患者具群113名と健常対照者243名を対象とした。

測定方法
  1. 振動覚閾値検査
    振動覚閾値検査は、リオン社製とHVLab社製の2種類の方法で行い、電流知覚閾値検査(Current Perception Threshold)値をニューロメーター(Neurometer,Neurotron,Inc,Baltimore)による2,000Hz,250Hz,5Hzで測定し、それぞれの値を対照者と各疾患の患者で比較した。測定部位は、第Ⅱ、Ⅴ指とした。測定時期は2010年10月~2012年2月で、室温は24℃とし、測定前30分に入室し、室内環境に順化した。手指の皮膚温>30℃とした。
  2. Current Perception Threshold (CPT 電流知覚閾値)
    電流知覚閾値(Current Perception Threshold、以下CPTと略)検査では、Neurometer(Neurotron, Inc, Baltimore)を用いて三種類の正弦波電流(2,000Hz,250Hz,5Hz)による刺激を加え、それぞれの刺激に対する閾値を測定する方法である。測定部位は第2 指と第5 指で測定した。

結果

①振動覚閾値検査
振動覚閾値検査は、施設や年齢の影響を受けるので、あくまで傾向として結果を示す。

対照群と各疾患群の振動覚閾値
対照群と各疾患群の振動覚閾値

CNT:対照
CPM:頸椎脊髄症
CPR:頸椎神経根症
CTS:手根管症候群
CuTS:肘部管症候群
DM:糖尿病
VS:振動障害

リオン社製(125Hz)で行ったforce choice methodでは、第2指で頸部脊髄症、頸椎性神経根症、手根管症候群、糖尿病、振動障害で高値の傾向であった。

①振動覚閾値検査
振動覚閾値検査は、施設や年齢の影響を受けるので、あくまで傾向として結果を示す。

図

第5指では、頸部脊髄症、肘部管症候群、振動障害で高値の傾向であった。

図には示さないが、HVLab社製(125Hz)では、第2指は振動障害、頸部脊髄症、手根管症候群、肘部管症候群で高値の傾向であり、第5指は振動障害、頸部脊髄症、頸椎性神経根症、手根管症候群、糖尿病、肘部管症候群で高値の傾向があった。

②電流知覚閾値検査(CPT)
振動障害、頸部脊髄症は、2000Hz、250Hzで高値の傾向がみられたが、5Hzではその傾向はみられなかった。糖尿病、手根根幹症候群では、第2指の2000Hz、250Hzだけでなく、5Hz でも高い傾向がみられた。図には示さないが、5指では肘部管症候群で2000Hz、250Hzで高値の傾向がみられた。

対照群と各疾患群のCPT値(第Ⅱ指)
対照群と各疾患群のCPT値(第Ⅱ指)

考察

  • 振動覚閾値は、年齢差や施設間差があるため、単純には比較できないが、第Ⅱ・Ⅴ指では、force choice methodとvon Bekesy method両者とも振動障害、頸部脊髄症で高値の傾向がみられた。
  • 一方、二ューロメーターを用いた電流知覚閾値(CPT)検査は2000Hz、250Hz、5Hz の正弦波の0~10mAの電流を流し、感覚閾値を調べる方法である。2000Hzは、直径5~15μの有髄神経であるAβ神経線維を刺激し、250Hzでは直径1~5μの有髄神経であるAδ神経線維を刺激し、5Hzは直径0.4 ~1. 5μの無髄神経であるC線維を選択的に刺激するといわれている。
  • 今回の検討より、測定部位を考慮した振動覚閾値検査、電流知覚閾値検査は、振動障害と糖尿病、手根管症候群、肘部管症候群等の末梢神経障害の鑑別に役立つ可能性があると考えられた。