脳・心臓疾患
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研究の概要
研究1「業務の過重負荷と脳・心疾患発症との関連に関する調査研究」
研究2「急性心筋梗塞患者における性格特性と冠動脈病変の再発」
研究3「業務の過重負荷と頚動脈硬化病変の進展との関連に関する研究」
研究報告書等一覧
研究1「業務の過重負荷と脳・心疾患発症との関連に関する調査研究」

勤労者 脳・心臓疾患研究センター
分担研究者 和田 安彦 ; 関西労災病院医療情報部長

 労働者の業務の量的負荷・質的負荷が脳・心疾患の発症(病気の発生あるいは罹患とも言います)にどのような影響を与えるかを、病院勤務者約3200人を対象に調査しました。約5年間の平均観察期間に発症した人は35人で、千人あたりの年間発生率は男3.5人、女1.2人でした。
 職種別の発生率を見たところ、男で職種間の格差を認め、技能業務職(現業職)と事務職で高い傾向を認めました。長時間勤務となりがちな医師が飛び抜けて高いという訳ではありませんでした。

男女別、職種別の脳・心疾患発症者の内訳と発生率
男女別、職種別の脳・心疾患発症者の内訳と発生率

 量的な労働負荷に関連するものとして、就寝時刻を調べたところ、発症した人は発症前の平均就寝時刻が24時00分で、発症していない人の平均就寝時刻の23時36分に比べて有意に遅いものでした。
 さらに、喫煙や生活習慣病などの脳・心疾患の危険因子が少ない人、すなわち健康的な生活をおくっている人ほど、量的労働負荷が発症により多く関与していたことも判明しました。

喫煙歴の有無別に見た発症と就寝時刻との関連
性・年齢で調整した最小二乗平均
喫煙歴の有無別に見た発症と就寝時刻との関連

 質的な労働負荷としては、脳・心疾患を発症した人はそうでない人に比べて、発症前に「自分の能力・技能が十分に活用されていない」、「仕事の裁量権が少ない」ということを多く感じていました。

質的な労働負荷と脳・心疾患発症との関連
(NIOSH職業性ストレス調査票の一部項目)
質的な労働負荷と脳・心疾患発症との関連

 以上、量的労働負荷は脳・心疾患発症を高めること、この関連はタバコを吸わない人や生活習慣病のない人ほど強いことが判明しました。
 さらに、量的負荷だけではなく、質的な労働負荷も考慮する必要があることも分かりました。
 今回の研究で得られた結果を今後の労働者の健康管理に役立てていただければ幸いです。
 また、職種間の格差についても明らかになりました。本研究がこの健康格差の真の原因を解明するきっかけとなり、わが国における勤労者の健康格差が今後解消されることを願っています。


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