職業性外傷
普及TOPへ戻る
TOPへ戻る
四肢切断、骨折等の職業性上肢外傷について
職場復帰に向けて
手の外科の歩み
その他
研究報告書等一覧
今後の展望

 誕生から50年以上を経過し、円熟期に入ったと考えられる手の外科ですが、今後も各種基礎研究分野とも共同してより一層の発展が期待されます。
 材料工学、加工技術の進歩により骨折の内固定材料(プレート、スクリューなど)は、近年手指の骨折に専用に用いられる優れた器械が開発され、強固な内固定による早期のリハビリが可能となっています。また、屈筋腱縫合の項でふれたように縫合糸などの手術材料も進化し続けています。
 組織培養の進歩によって関節軟骨などの欠損を自己組織の培養によって損傷部の形態に合わせて作り出すいわゆるオーダーメードの組織修復も検討され始めており、tissue engineeringは幹細胞の利用による再生医療とともに近年脚光を浴び始めてきました
 近年、分子生物学の進歩に伴い、各種の成長増殖因子などが利用可能になりましたが、これらを各種薬物送達システム(DDS)と組み合わせて使用することにより、骨、神経、腱などの損傷の修復を促進させる試みがすでに始まっています。
 また、外傷などで失われた手の再建として、ロボット義手の開発や脳死ドナーからの同種手移植が実際に行われています。ロボット義手に関しては切断肢の神経電位をひろって筋電義手を操作することにより義手に随意運動を可能とさせる技術ですが、知覚のフィードバックや繊細な運動の復元が解決すべき問題です。同種手移植に関しては1998年、フランスのリヨンで第一例目が施行されて以来、2004年までにすでに世界で20名の患者に26手、1指の移植が行われたと報告されていますが、我が国ではまだ行われていません。生命維持臓器ではない手の移植のために感染や悪性腫瘍発生のリスクを伴う免疫抑制療法を永続的に行わなければいけないことや、現時点では保険の適応外のため莫大な自己負担がかかることが問題点としてあげられます。 


COPYRIGHT