独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

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アスベスト

テーマ1.
中皮腫早期診断システムの確立に関する研究・開発

研究目的

「胸膜中皮腫」は、診断・治療ともに困難で、大半は診断時にすでに進行してしまっており、予後がきわめて悪い疾病である。

これまでの私たちの研究では、中皮腫ではその約70%が、診断時から胸水が貯留することを報告してきた。胸水は臨床現場で比較的容易に採取することが可能であるが、胸水による中皮腫の診断は容易でなく、肺がんや良性石綿胸水など他の疾患との鑑別が問題となる。

本研究では、中皮腫の補助的な診断のため、特に、胸水における中皮腫の診断マーカーの有用性について検討した。実際に臨床において測定されている胸水ヒアルロン酸値のデータを集積し、新たな診断マーカーの候補としてsoluble mesothelin related protein (SMRP)の有用性についても併せて検討した。

さらに、これらのマーカーの組み合わせによる診断精度向上の可能性についても検討した。

考察

  • 胸水ヒアルロン酸値は中皮腫において有意に高値を呈しており、既存のマーカーの中では実用性が高いと考えられた。
  • SMRPなどの分子マーカーは、それ自体で中皮腫の確定診断には至らないが、補助マーカーとなりうると考えられた。
  • 胸膜中皮腫診断において、ヒアルロン酸あるいはSMRPが高値の症例で、かつ、CEAが高値である症例を除外することにより、感度69.0%、特異度86.2%、正診率81.9%との結果が得られ、複数のマーカーの組み合わせにより診断精度が向上すると考えられた。