独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

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働く女性の健康

テーマ5
働く女性における介護ストレスに関する研究-女性介護離職者の軽減をめざして-

研究目的

介護には肉体的精神的ストレスを伴うことは容易に予測されるものの、実際どのような因子が介護担当者のストレスになっているかの分析は未だ多くなされていない。また、ストレスの感じ方には個人差があり、他覚的定量評価もストレス強度の把握には重要と考えられる。
今回の研究では、介護従事者の在宅介護従事者の介護ストレス因子の分析を行うとともにと唾液中ストレスマーカーの測定によるストレス度の定量を行い介護ストレスの実態把握を目的とする検討を行った。

考察

今回の介護ストレスに関する検討では、介護対象者の認知機能障害、認知機能障害に伴う問題行動、排泄介助などの負担が介護者の抑うつ度を強くする因子であることが示された。特に嫁の立場で異性である舅の介護に従事した場合のストレスは非常に大きいと考えられる。
就労者では非就労者に比較して抑うつ度が低く、バイオストレスマーカーの定量においても身体的ストレスを反映する唾液中コーチゾルは高値を示すものの、精神的マーカーであるCgAは非就労者に比較して低値を示した。このことは介護担当者にとって働くことは、介護以外の生活の場を持つことによって、「疲れるけれども心は落ち着く」という効果が期待できることを意味していると考えられる。やむを得ず離職していく女性たちに介護と就労の両立を援助する制度の確立が急務である。
男性介護者については自覚的な介護負担度や不安・抑うつ度は女性介護者に比較して低いにもかかわらず、唾液中CgAは上昇していた。このことは男性介護者が自らの精神的ストレスを自覚していない可能性が考えられ、適切な指導が必要と考えられる。介護ストレスコーピングにも性差が存在することを示す結果と考えられ、今後さらなる検討が必要である。