【目的】
全国の労災病院で診断されたじん肺合併肺がんの発見時の動機や病期、治療法、予後等について調査し、特に平成15年度からじん肺検診に新たに導入された胸部CT、喀痰細胞診に関してじん肺合併肺がんの診断に対する有用性について検討する。
【対象】
平成16年4月以降に労災病院で原発性肺がんと診断されたじん肺患者
【参加施設】
全国の労災病院に対してアンケート調査を実施 (目標50例)
【研究期間】
平成21年10月から24年3月まで
【方法】
じん肺合併肺がん症例について第1期研究の調査項目に腫瘍径と画像診断上遡って確認できる時期の2項目を追加して調査し、そのデータを北海道中央労災病院へ収集し分析する。
調査項目
① 年齢、性別、職歴、喫煙歴
② 胸部X線写真分類
③ 呼吸機能、動脈血ガス分析
④ 肺がんの腫瘍径
⑤ 組織型と発生部位
⑥ 発見動機
⑦ 診断日および画像診断可能時期の確認
⑧ 病期、治療法、予後など
【中間集計結果】
これまで登録したじん肺に合併した肺がん90症例について中間集計した。対象となった患者の年齢は50~91歳、平均74歳であった。肺がんの組織型は腺癌37例(41%)、扁平上皮癌29例(32%)、小細胞癌15例(17%)、大細胞癌5例(6%)であった。臨床病期はⅠ期が43%、Ⅰ+Ⅱ期が52%であった(表―1)。また肺がんの診断契機はじん肺管理2~3(ロ)の患者が受診する管理検診による発見が31%、管理4患者の定期検査による発見が11%、その他が58%であり、じん肺管理検診や定期検査が肺がん発見の契機全体の42%を占めていた(図―1)。また診断契機と臨床病期との関係をみると、肺がんが定期検査で発見された群では臨床病期Ⅰ期が53%であるのに対し、その他の契機で発見された群では34%であり、定期検査群で臨床病期Ⅰ期の比率が有意に高値だった。以上の成績はじん肺に合併する肺がんの診断に、これらの定期検査が重要であることを示していると思われる。
また肺がんを疑ったきっかけでは、胸部X線写真によるものが45例(50%)、胸部CTが23例(26%)、喀痰細胞診が12例(13%)、症状によるものが9例(10%)であった。以上の結果より、じん肺に合併する肺がんの診断のきっかけとして胸部X線写真が50%と最も多いが、特に今回の研究で注目した胸部CTと喀痰細胞診の合計が39%を占めており、これらの2つの検査法も肺がん診断に重要であることを示していると考えられた。
表―1 臨床病期
臨床病期 | 例 | % |
---|---|---|
ⅠA | 25 | 29 |
ⅠB | 13 | 14 |
ⅡA | 6 | 7 |
ⅡB | 2 | 2 |
ⅢA | 20 | 22 |
ⅢB | 4 | 4 |
Ⅳ | 20 | 22 |
計 | 90 | 100 |
図―1診断契機の内訳