独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

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テーマ2:切断指再接着に関する調査研究
①指尖部切断における確実性の高い安全な術式および手術器械の開発に関する検討

結 果

 15指中13指が生着し、生着率は87%であった。爪床幅が健側比で平均95.4%、末節長の健側比が平均で93%と良好な形態が保たれ、%TAMの平均は92%だった。
知覚回復は、SWTでpurple 8、blue 4であったが、50歳以上の2例で2-PDが測定不能であり、患指に強いしびれが残存していた。

図

考察とまとめ

  • 指尖切断に対する再接着術では、従来の動脈吻合のみでも瀉血を併用すれば良好な成績が得られた。
  • 高倍率顕微鏡などの医療機器の進歩により、指尖切断においても静脈吻合を追加できる症例は増える傾向にある。これにより瀉血のリスクを回避でき、より安定した治療成績が期待できる。

テーマ2:切断指再接着に関する調査研究
②指尖切断に対する再接着術以外の術式の検討

結 果

14皮弁とも完全に生着した。術後合併症として2皮弁で軽度のうっ血を呈したため、皮弁の抜糸と注射針による瀉血を行った。%TAMは52~95%で平均74%だった。
PIPおよびDIP関節の屈曲拘縮角度の平均はそれぞれ9.4度、12度であった。最終経過観察時にSemmes Weinstein testが行われていたのは11指で、2例を除いてpurpleからblueの知覚回復が得られた。神経縫合を行わなかった(非知覚皮弁)9指のうち最も大きい皮弁(25×35mm)の知覚回復は不良であったのに対し、神経縫合を行った(知覚皮弁)2指のうち最も大きい皮弁(28×35mm)の知覚回復は良好であった。

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考察とまとめ

  • 血管茎に皮下静脈網を含めて皮弁の挙上することで術後のうっ血を回避でき、高い生着率が得られた。
  • 採取可能な皮弁サイズについては今後詳細な検討が必要となるが、比較的大きな皮弁に対しては神経縫合を追加することが望ましい。

テーマ2:切断指再接着に関する調査研究
③機能的および整容的に良好な手指を再建するための切断指再接着後二次手術の検討

結 果

全体の生着率は94%で、完全切断指では93%、不全切断指では95%の生着率であった。単独指再接着の症例では33%が二次手術を受けたにとどまったが、多数指再接着の症例では74%が二次手術を受けていた。損傷レベルにおいては、Zone1 10%、Zone2 25%、Zone3 76%、Zone4 96%、Zone5 100%で二次手術が行われ、損傷レベルが近位になるにしたがい、二次手術が必要となる症例の割合が増加していた。また損傷形態別では、clean 27%、Crush 74%、avulsion 78%で二次手術が行われており、損傷形態が複雑化するにしたがい、二次手術の頻度も増加していた。最も多く行われていた二次手術は骨移植、皮膚・軟部組織、腱および骨に関する手術だった。

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手術時期を初回手術後2か月を境に早期、晩期に分けると、早期では皮膚・軟部組織の再建が最も多く施行され、晩期では腱剥離術や腱移行術が最も多かった。

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考察とまとめ

  • 多数指切断や複雑な組織欠損を伴う症例では、必ずしも一期的再建が十分に行えるとは限らず、適切な時期に皮膚・軟部組織、骨安定性、手指可動域などを再建することが必要となる。
  • 一般に、皮膚・軟部組織、骨安静性、腱・関節、外観の順に二期的再建が行われるべきである。

テーマ2:切断指再接着に関する調査研究
④高齢者に対する再接着術の検討

結 果

手術時間は2時間52分から7時間45分、平均5時間8分で、8例14指(93%)は完全生着したが、左母指切断の1例1指に部分壊死を認め、逆行性橈側前腕皮弁による再建を要した。
指可動域は母指以外のTAMが0度から177度、平均80.3度で、母指TAMが20度から70度、平均38.7度であった。

知覚評価を施行しえた8指すべてでSemmes Weinstein TestがPurpleとなり、protective sensationが獲得されていた。

1例で術中不穏により全身麻酔に変更した。術後合併症は、1例で輸液負荷による心不全を発症したが、輸液の減量と全身管理により回復し、切断指は良好に生着した。

考察とまとめ

  • 高齢者に対する切断指再接着の成績は若年者の成績との間で有意差はなく、年齢のみで再接着術の適応を決定すべきでない。
  • 手術は低侵襲を心がけるとともに、術後合併症の予防にも細心の注意を払う必要がある。