病職歴調査

病気と職業や生活習慣の関連を研究するための調査

病職歴調査とは

English

病職歴調査とは

病職歴調査は1984年から全国の労災病院で、入院患者を対象に病歴と職業歴等を併せて調査している、労災病院グループ特有の大規模調査です。
これまでに蓄積されている情報登録件数は約428万件(2023年11月現在)です。

※さらに詳しい情報については以下をクリックして下さい。
令和5年度 入院患者病職歴調査基礎解析(入院患者病職歴調査統計処理専門委員会)

病職歴調査の目的

この調査は、労災病院に入院された患者さんの病歴と職業歴及び喫煙歴等の生活習慣を併せて調査し、それにより得られた情報を診療に役立てるとともに、働く人々の職場環境と疾病との関連性を臨床的、疫学的に研究し、これらの研究成果を勤労者の健康の保持増進及び疾病の予防・治療・職場復帰支援に活用することを目的としています。

病職歴データとは

病職歴データとは、病職歴調査により得られた情報を全国労災病院グループのネットワークを活用して収集しデータベース化したものであり、「病歴情報」と「職業歴情報」を併せ持つ我が国唯一の大規模データベースです。

病職歴調査は、「病歴調査」と「職業歴等調査」で構成されています。
病歴調査は、労災病院グループに入院した全ての患者を調査対象として、主治医が記載する入院診療要約書(サマリー)により調査しています。
病歴情報のうち、確定診断名についてはICD-10(国際疾病分類)を用い、手術についてはICD-9-CM(国際疾病分類)を用いてそれぞれコーディングしています。
一方、職業歴等調査は、労災病院グループに入院した患者のうち15歳以上の全ての入院患者を対象として、現在の職業だけでなく、過去に従事していた職業を3つまで遡り調査をしています。
職業歴情報については総務省より告示されている「日本標準産業分類」及び「日本標準職業分類」に従ってコーディングしています。
調査で得られた情報は、各労災病院の診療情報管理士と職業歴等調査員により病職歴データベースへ登録されます。

※病職歴調査の概要【英語版】は以下をクリックしてご覧ください。
 なお、研究・教育、その他の公的な目的の場合は、ご自由に引用・参照していただいて構いません。商業目的での転用等はご遠慮ください。

英語版(Click here for English version.)

病職歴データの構成等

病職歴データの主な項目は以下のとおりです。

  1. 年齢
  2. 男女別
  3. 在院日数
  4. 病名
  5. 手術名
  6. 入院経路
  7. 退院経路
  8. 転帰事由
  9. 労災の有無
  10. 産業名(現職、前職1~3)
  11. 職業名(現職、前職1~3)
  12. 雇用形態
  13. 交替制勤務の有無
  14. 特殊健診受検の有無
  15. 喫煙歴
  16. 飲酒歴
  17. 生活習慣病既往の有無
  18. 職場復帰希望の有無
※4. はICD-10(疾病、傷害および死因統計分類提要)による病名
5. はICD-9-CM(手術および処置の分類)による手術名
10. は日本標準産業分類、11.は日本標準職業分類による名称
全項目はこちらをご覧ください。

病職歴調査がデータベース化されるまで

病職歴調査がデータベース化されるまで

病職歴データベースを活用した研究実施に関する情報公開

インフォームド・コンセントを受けない場合において、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針
(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」に基づいて、下記のとおり情報を公開します。

研究課題名 研究期間
入院患者病職歴調査における職場復帰の希望に関する研究 R6.9.27~R8.3.31
ICD-11導入前の課題に関する分析;入院患者病職歴調査を活用した横断研究 R6.9.27~R8.3.31
周産期患者に関する疫学調査;入院患者病職歴調査を活用した横断研究 R6.9.27~R8.3.31
医療職患者に関する疫学調査;入院患者病職歴調査を活用した横断研究 R6.9.27~R8.3.31
退院時不安患者に関する分析;入院患者病職歴調査を活用した横断研究 R6.9.27~R8.3.31
難聴と職業・産業:入院患者病職歴調査を活用した横断研究 R6.9.27~R8.3.31
入院患者病職歴調査による難病と職業因子に関する系統的かつ探索的研究 R6.9.27~R8.3.31
入院患者病職歴調査による呼吸器・循環器疾患と職業因子に関する系統的かつ探索的研究 R6.9.27~R8.3.31
入院患者病職歴調査によるがんと職業因子に関する系統的かつ探索的研究 R6.9.27~R8.3.31
労災病院群における脳卒中・循環器病入院患者の疫学分析 R6.9.27~R8.3.31
労災病院群における新型コロナウイルス感染症入院患者の疫学分析 R6.9.27~R8.3.31
労災病院入院病歴データベースを用いた職業分類と健康影響に関する研究 R6.9.2~R15.3.31
交代勤務制及び総労働時間と急性心筋梗塞発症との相関 R6.5.27~R7.3.31
地域差や職歴による脳腫瘍発生リスクの違いについて(病院機能向上研究) R5.4.1~R7.3.31
病職歴調査データを利用した鼠径ヘルニアなどの腹部のヘルニア疾患の発生の危険因子の探索(病院機能向上研究) R4.4.1~R6.3.31
労災病院入院患者病職歴調査を用いた手指外傷の受傷原因、業務形態の経年変化調査(病院機能向上研究) R4.4.1~R6.3.31
全国労災病院病職歴調査に基づく働く肺癌患者に対する多職種によるオンライン両立支援外来の開発(病院機能向上研究) R4.4.1~R6.3.31
全国労災病院データからみた未破裂脳動脈瘤治療の在院日数の推移」(病院機能向上研究) R4.4.1~R6.3.31
ストレス社会における痛風・高尿酸血症の年度別発生頻度調査(病職歴調査データを利用した研究)(病院機能向上研究) R4.4.1~R6.3.31
入院病職歴データベースを基礎とし、データソースとlinkageすることで探る、患者の社会的背景が病因、疾病予後、入院医療費へもたらす影響の検討 R4.4.1~R6.3.31
入院患者病職歴調査による疾病予防と復職に関する疫学研究 R3.4.1~R6.3.31

病職歴データベースの活用(研究成果)

以下の論文及び報告書のうち出版元の許可により閲覧可能なものは掲載しています。

研究論文

年度 氏名 論文名 掲載紙
令和5年 金子 麗奈 (独)労働者健康安全機構入院病職歴データベース(ICOD-R)と入院患者レセプトデータのリンケージの試み 日職災医誌, 71: 30-35, 2023
深井 航太 Length of employment in workplaces handling hazardous chemicals and risk of cancer among Japanese men OccupationalandEnvironmentalMedicine (2023;80:431–438.)
佐野 圭 Association Between Alcohol Consumption Patterns and Glaucoma in Japan Journal of Glaucoma (2023;32:968–975)
令和4年 豊田 章宏 15年間の死亡統計から学ぶ:全国労災病院病職歴データベースによる検討 日本職業・災害医学会誌 70:131-139,2022
深井 航太 Alcohol use patterns and riskof incident cataract surgery: a largescale case–control study in Japan Scientific Reports (12:20142, 2022)
中澤 祥子 Occupational class and risk of hepatitis B and C viral infections: A casecontrol study-based data from a nationwide hospital group in Japan Journal of Infection and Public Health 15 (2022) 1415–1426
中澤 祥子 Occupations associated with diabetes complications: A nationwide-multicenter hospital-based case-control study Diabetes Research and Clinical Practice Volume 186, April 2022, 109809
令和3年 武内 巧 Genome-Wide Association Study Adjusted for Occupational and Environmental Factors for Bladder Cancer Susceptibility Genes 2022, 13(3), 448;
深井 航太 A case control study of occupation and cardiovascular disease risk in Japanese men and women Scientific Reports volume 11, Article number: 23983 (2021)
古屋 佑子 Occupational physical activity differentially affects the risk for developing later-onset Crohn’s disease and ulcerative colitis among middle-aged and older Scandinavian Journal of Gastroenterology Volume 57, 2022 - Issue 2
令和2年 小島原 典子 The relationship of hospital stay and readmission with employment status Industrial Health 2021, 59, 18–26
深井 航太 Combined effects of occupational exposure to hazardous operations and lifestyle‐related factors on cancer incidence Cancer Science Volume111, Issue12
December 2020 Pages 4581-4593
金子 麗奈 Inequality in cancer survival rates among industrial sectors in Japan: an analysis of two large merged datasets Environ Occup Health Practice 2021; 3
doi:10.1539/eohp.2020-0021-OA
豊田 章宏 全国労災病院における破裂脳動脈瘤3,963 例の部位・性差・年齢に関する検討 脳卒中 2020年42巻4号 p.233-238
金子 麗奈 Manufacturing Industry Cancer Risk in Japan: A Multicenter Hospital-Based Case Control Study Asian Pacific Journal of Cancer Prevention, 2020;Vol21(9):2697-2707
令和元年 金子 麗奈 Risk of cancer and longest‐held occupations in Japanese workers:A multicenter hospital‐based case‐control study Wiley「Cancer Medicine」 2019;00:1–12.
神宮司 誠也 労災病院の病職歴調査データとリンクさせた退院後職場復帰調査 日本職業・災害医学会誌
67,345-349,2019
平成30年 大塚 義紀 病職歴データベースによるじん肺患者におけるANCA(好中球細胞質抗体)関連血管炎・腎疾患発症頻度の検討 日本職業・災害医学会会誌 
66:259-263,2018
平成28年 宮内 文久 就労が女性特有の疾患の手術時期におよぼす影響(労働者健康安全機構が有する病職歴データから) 日本職業・災害医学会会誌
64,349―357, 2016
神宮司 誠也 労災病院の入院時病職歴データとリンクした、試験的退院後職場復帰調査 日本職業・災害医学会誌
65,8-13,2017
豊田 章宏 全国労災病院入院患者病職歴調査から見た就労がん患者の実態 日本職業・災害医学会誌
64,128-137,2016
平成27年 久保田 昌詞 職業性胆管癌の疫学研究‐2.症例対照による検討‐ 日本職業・災害医学会誌
64:150-155,2016
久保田 昌詞 職業性胆管癌の疫学研究‐1.職歴との関連‐ 日本職業・災害医学会誌
64:93-100,2016
金子 麗奈 Comparison of Clinical Characteristics between Occupational and Sporadic Young-Onset Cholangiocarcinoma Asian Pacific Journal of Cancer Prevention,2015;Vol16(16),7195-7200
金子 麗奈 (独)労働者健康福祉機構入院病職歴データベースの若年性胆管癌症例における有機溶剤使用と臨床的特徴 肝臓 56巻7号
332-340(2015)
神宮司 誠也 病職歴調査データによる勤労者入院患者の状況-第2報- 日本職業・災害医学会誌
63,364-371,2015
平成26年 金子 麗奈 若年性胆管癌の疫学的特徴について‐職業性胆管癌調査の予備的解析‐ 日本消化器病学会雑誌
Vol. 111 (2014) No. 3 510-511
神宮司 誠也 全労災病院の病職歴調査データによる、勤労者入院患者の現状 日本職業・災害医学会誌
62,388-392,2014
豊田 章宏 全国労災病院データからみた急死例の検討 日本職業・災害医学会誌
62,57-64,2014
平成24年 豊田 章宏 全国労災病院データ150,899例(1984年-2009年)からみたわが国の脳卒中病型の変遷 脳卒中 Vol.34(6)
399-407,2012
平成23年 松平 浩 労災病院データベースを用いた腰椎椎間板ヘルニア手術例の実態調査 Jounal of Spain
Research Vol.2 NO.6
2011,1082-1087
豊田 章宏 全国労災病院46,000例からみた脳卒中発症の季節性(2002-2008年) 脳卒中 Vol.33(2)
226-236,2011
平成22年 豊田 章宏 勤労者世代における脳卒中の実態:全国労災病院患者統計から 日本職業・災害医学会誌58(2)、
89-93,2010

厚生労働科学特別研究事業「印刷労働者にみられる胆管癌発症の疫学的解明と原因追究」研究報告書

平成26年 久保田 昌詞 労災病院病職歴データベースにおける胆管癌と病職歴との関連
~症例対照研究による検討~
平成26年度
厚生労働科学特別研究事業報告書
平成25年 久保田 昌詞 労災病院病職歴データベースにおける胆管癌と病職歴との関連の解析 平成25年度
厚生労働科学特別研究事業報告書
平成24年 久保田 昌詞 労災病院病職歴データベースにおける若年性発症胆管がんの解析 平成24年度
厚生労働科学特別研究事業報告書

各種学会発表

年度 氏名 発表タイトル 学会名
令和5年 中澤 祥子 職業階層とB型C型肝炎ウイルス感染症の関連(全国労災病院病職歴データベース) 第96回日本産業衛生学会
令和4年 古屋 佑子 全国労災病院病職歴データベースにおける職業性身体活動と疾患(その1)CVD 第95回日本産業衛生学会
中澤 祥子 全国労災病院病職歴データベースにおける職業性身体活動と疾患(その2)女性がん 第95回日本産業衛生学会
深井 航太 全国労災病院病職歴データベースにおける職業性身体活動と疾患(その3)男性がん 第95回日本産業衛生学会
佐野 圭 飲酒習慣と緑内障の関連 -全国労災病院病職歴調査データベースより- 第33回日本緑内障学会
令和3年 深井 航太 有害業務への従事期間とがん罹患の関連 -全国労災病院病職歴調査データベースより- 第94回日本産業衛生学会
古屋 佑子 潰瘍性大腸炎の職業歴における発症リスクの検討 - 全国労災病院病職歴データベースより - 第94回日本産業衛生学会
深井 航太 全国労災病院病職歴データベースにおける職業性身体活動‐がん編 第92回日本衛生学会
古屋 佑子 全国労災病院病職歴データベースにおける職業性身体活動‐心血管疾患編 第92回日本衛生学会
中澤 祥子 糖尿病合併症の罹患と職業歴の関連‐全国労災病院病職歴データベースより‐ 第94回日本産業衛生学会
令和2年 古屋 佑子 炎症性腸疾患と最長職業歴との関連‐全国労災病院病職歴データベースより 第91回日本衛生学会
深井 航太 有害作業の業務歴と喫煙の複合的曝露が肺がん罹患に及ぼす影響 第91回日本衛生学会
深井 航太 特殊健康診断の受診歴とがんの罹患に関する検討-全国労災病院病職歴調査データより- 第93回日本産業衛生学会
星 佳芳 全国労災病院・入院患者病職歴調査における患者としての医師の働き方と生活習慣の変化 第93回日本産業衛生学会
金子 麗奈 ビッグデータに基づく肝癌の予後および予後因子に関する疫学的分析 第106回日本消化器病学会総会
令和元年 深井 航太 全国労災病院病職歴調査データを用いた職種と脳・心血管疾患の発症に関する検討 第30回日本疫学会学術総会
平成30年 金子 麗奈 労働者健康安全機構・病職歴データベースを用いた産業による癌発症リスクの検討 第77回日本公衆衛生学会総会
小島原 典子 入院患者病職歴調査における入院期間と入院回数の変化 第91回日本産業衛生学会
平成29年 星 佳芳 平成27年・入院患者病職歴調査における退院後の復職に対する不安についての検討 第28回日本疫学会学術総会発表
平成26年 金子 麗奈 「職業癌として発生する若年性胆管癌と通常若年性胆管癌の比較」 第40回日本肝臓学会部東部会発表
金子 麗奈 「労災病院病職歴データベースにおける胆管癌の疫学的特徴」 第62回日本職業・災害医学会発表
神宮司 誠也 勤労者入院患者割合と病院機能臨床評価指数との関連性について 第62回日本職業・災害医学会発表
豊田 章宏 全国労災病院におけるくも膜下出血の実態 第73回日本脳神経外科学会総会発表
平成25年 財津 將嘉 職業分類別の膀胱癌の病理組織分布 第61回日本職業・災害医学会発表

病職歴関連動画

当機構では、病職歴データを用いた研究を基に、論文、学会発表も行っています。
研究者による平成27年11月に行われた学会での発表動画を下記にご案内します。

全国労災病院入院患者病職歴調査から見た
勤労者がん患者の実態

平成27年11月22日 日本職業・災害医学会
豊田章宏(中国労災病院 治療就労両立支援センター)

生産者人口年代における
勤労者入院患者の疾病と手術

平成27年11月22日 日本職業・災害医学会
神宮司誠也(九州労災病院)

調査対象者の同意及び個人情報の保護

病職歴調査は入院された15歳以上の方(調査対象者)又は、そのご家族に対して調査の目的を
ご理解いただいたうえで実施しています。
また、病職歴調査で得られた情報は、各労災病院に設置している専用端末に登録しますが、 個人
情報を削除した状態で労働者健康安全機構本部に蓄積され、電子化されたデータベースとなります。
そのため、このデータベースを解析や研究に使用する場合は個人情報が漏洩することはありません。
病職歴調査のご協力についてのお願いはこちらをご覧ください。