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感覚器障害

テーマ2.
糖尿病網膜症に対する硝子体手術成績の比較

増殖糖尿病網膜症(PDR)に対する硝子体手術成績を、20ゲージ(G)システム使用例と25Gシステム使用例の間で後ろ向きに比較した。

図1

結果③各治療群における治療前後の視力変化

図2

横軸は経過観察期間、縦軸はlogMAR視力を示す。
術前及び術6か月後の小数換算平均視力は、20Gガス無し群で0.12→0.35、25Gガス無し群で0.10→0.32、20Gガス有り群で0.02→0.06、25Gガス有り群で0.08→0.22で、20Gガス有り群以外の3群では術前視力と比較して、術6か月後視力の有意な(P<0.05)改善を認めた。 なお、術後合併症はタンポナーデ施行の有無に関わらず、20G群と25G群の間で頻度に差がなかった。

まとめ

  • 今回の調査では硝子体手術は糖尿病網膜症の病態を改善させ、さらに長期間安定させることができる可能性が示唆された。また、近年急速に普及した25G小切開硝子体手術システム(microincision vitrectomy system : MIVS)の低侵襲性が、入院期間が短縮されたことをもって定量的に実証された。
  • 今後は、視覚関連QOL等を含め、多角的に比較することで「硝子体手術の治療法を、さらに安全かつ低侵襲でより低負担なものに発展させていくための研究、開発を行い、これを普及させ、就労と治療の両立支援の実現を図る」という研究課題の成果を客観的に把握し、評価分析を進めていく予定である。
  • また、低侵襲な硝子体手術が普及してきた現在においては、病態が重症化する前に硝子体手術を施行することが、治療期間の短縮や来院回数の減少、良好な視力予後につながるのではないかとも考えられ、硝子体手術の至適施行時期についても更に探求していきたいと考えている。