職業性呼吸器疾患

4.新たな粉じんにより発症するじん肺の実態調査に係る研究

【目的】
歯科技工士じん肺やレアメタルによるじん肺等の新たな粉じんによるじん肺症について、発生状況、胸部X線所見、臨床症状等について調査する。

【対象】
新たな原因によるじん肺症例

【参加施設】
全国労災病院に対しアンケート調査を実施する。

【研究期間】
全国労災病院へアンケート調査を実施し、該当症例を集積する。

【方法】
全国労災病院へアンケート調査を実施し、該当症例を集積する。
 粉じん職歴、臨床所見、病理所見等を調査し、胸部X線写真、CT画像を収集する。

【収集した症例】
 超硬合金肺の1例(北海道中央労災病院):43歳の女性で超硬合金の研磨作業に8年間従事していた。胸部X線写真、胸部CT所見と、肺組織の蛍光XAFS法による元素分析により炭化タングステンが同定されたことから、超硬合金肺と診断された。

写真―2 胸部X線写真:中下肺野にびまん性粒状網状影がみられる。
胸部X線写真:中下肺野にびまん性粒状網状影がみられる。

写真―3 胸部CT:小葉中心性で上方は主に粒状影が、下方は斑状影がみられる。
胸部CT:小葉中心性で上方は主に粒状影が、下方は斑状影がみられる。

写真―4 ルーペ像:右下葉S6に外縁が比較的明瞭な小結節状病変がみられる。
ルーペ像:右下葉S6に外縁が比較的明瞭な小結節状病変がみられる。

超硬合金肺:タングステン、コバルト、ニッケル等を含む超硬合金の粉じんを吸入することにより発症する肺病変で、超硬合金製造工場、超硬合金工具の切削研磨作業所、ダイヤモンド工具作製作業所などで発生する。肺の病理組織像は巨細胞性間質性肺炎(GIP)が特徴と言われているが、これまでGIP所見の乏しい症例も報告されている。我々が経験した症例もGIP所見の程度は弱かった。本疾患の発病機序はまだ不明で、慢性過敏性肺炎のようなアレルギー機序も考えられている。