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テーマ1:手指外傷に対するスコアリングシステムの再構築

結 果

HISSと玉井の評価基準との間には、相関係数が-0.772と高い相関関係が示され、損傷重症度が高いほど最終獲得機能が低下した(図2)。

図2
図2 玉井の評価基準とHISSの相関関係

また、HISSにおける各損傷因子と玉井の評価基準との間の相関関係は図3に示すとおりであった。

図3
図3 HISSの各因子と玉井の評価基準との相関関係

修正HISSと玉井の評価基準との間にも、相関係数が0.737と高い相関関係を認めたが、相関の強さは従来のHISSと同程度で、重傷例のみを含む群では血管損傷因子を加えたことによる有意な差は認められなかった。

一方、血管損傷因子のみと玉井の評価基準との間の相関係数は-0.657で、皮膚損傷因子および神経損傷因子と同程度の高い相関関係が認められた(図4)。

図4
図4 HISSの各因子と玉井の評価基準との相関関係

考察とまとめ

  • 血管損傷因子を追加した修正HISSと玉井の評価基準との間に高い相関関係が示されたが、相関の強さは従来のHISSと同程度であった。理由として、本研究の症例群が重傷例のみに限定されており、全症例で血管損傷を合併していたことから、修正HISSとして血管損傷因子を加えても、HISSと玉井の評価基準との相関関係に大きな影響を及ぼさなかったためと推測される。
  • 血管損傷因子のみと玉井の評価基準との間の相関係数は、皮膚損傷因子および神経損傷因子と同程度の高い相関関係が認められており、血管損傷因子を追加して検討することの妥当性が示された。
  • 機能的母指の再建を最も重要な目標とすることは、母指を含んだ手指外傷に広く適応されるべき概念であり、HISSの定数で母指が最も高いことは妥当と考えられる。しかし、母指 に対する対向指の再建においては様々な考察がなされており、必ずしも中環指の機能的重要度が高いとは限らず、母指以外の定数については議論の余地が残される。